いちのさかいせき |
山形県米沢市矢来1 |
縄文時代前期初頭 |
縄文時代の竪穴建物跡は、長さが10m以上のものを大型竪穴建物跡、通称ロングハウスといいます。ロングハウスは東北などの寒い地方に多い傾向があります。有名なのは、青森県の三内丸山遺跡にある大型竪穴建物跡でしょう。
長さは32mあり、床面積は270㎡あります。これを見ると、あまりにも立派なので勝手に日本一のロングハウスだと思い込んでしまうかもしれませんが、実は長さだけで見た場合は、国内最長のものは米沢市の一ノ坂遺跡から見つかっているのです。
現場に着到。
説明板を読んでみましょう。
一ノ坂遺跡は、縄文時代前期初頭の遺跡です。
でも、普通の集落跡などではなく、ちょっと変わっています。
いや、ちょっとどころじゃないかも。
どう変わっているかというと、ロングハウスがあることは、大きさは別として珍しいことではなく、それよりかは、説明板の遺構配置図で黄色の建物跡を見て分かる通り、竪穴建物跡が一列に並んでいることが変わっているのです。
『一ノ坂遺跡発掘調査概報 第5集』(米沢市教育委員会/編・1995年=以降「概報」と称す)では、これを「連房型竪穴住居跡」と呼んでいます。
縄文時代は、竪穴住居を建て替えるときにすぐ隣に建てることもあるので、違う時代の建物跡ではないかと思われるかもしれませんが、連房型竪穴住居跡と呼称していることからわかる通り、同じ時代に建てられた建物跡です。「概報」では、石器製作をしていた工人の住居跡(宿舎)としています。そして重要なこととして、縄文時代において、連房型竪穴住居跡の発見はこれまで類例がないのです。
「連房」と呼称されるものを他に探すと、時代が下って平安時代の事例ですが、茨城県石岡市の鹿の子C(かのこしー)遺跡(8C末~10Cの集落跡)から「連房式竪穴遺構」と呼ばれる遺構が検出されており、常陸風土記の丘に復元展示されています。
内部には、炉が1基とカマドが4基備えられ、住居兼工房としています。ここの場合は、朝廷の対エミシ政策のための装備品の製造拠点だと考えられています。
ただし、ここの場合は一ノ坂遺跡のものと違って、連房とはいっても、住居跡ごとの区切りがありません。
「概報」でも連房型竪穴住居跡というのは「仮称」としており、まだ評価が定まっていないようです。「概報」が出てから30年近く経っていますから、その後の研究がどう進展しているのか気になるところですが、私のような下々の者にはそういった情報は降りてきません。
さて、「連房型竪穴住居跡」については今後も留意するとして、大型建物跡が見つかった場所を見てみましょう。建物跡の復元などはありませんが、大きさが十分に分かるように綺麗に整地されています。
遺構は説明板にある通り、この土地の所有者が家を建て替える際に検出されたものです。所有者の考え次第では、遺構をぶっ壊して新しい家を建てるという事態にもなったのですが、所有者が理解がある方だったようで新しい家は場所をかえて建ててくれたのです。そのお陰で遺構は守られました。
「概報」によると、大型住居跡、連房型竪穴住居跡の両方とも埋め戻して現況保存しているとのことなので、埋め戻した上にさらに土盛りしてガードして、その上でこのように綺麗な状態に整地しているのです。
ちなみに、連房型竪穴住居跡の方は、このようになっており入ることはできません。
しかし、43.5mというと、子供の頃に50m走を計測したと思いますが、あの長さに近いわけです。
これは実際に現地を見ていただくと、その長さに驚くと思いますよ。
ただし、幅は4mほどで、単純に床面積を計算すると、174㎡になって、三内丸山遺跡の270㎡には負けてしまっています・・・
別にここで勝ち負けを言っても仕方がないですし、そういう価値観を述べると縄文人に笑われてしまうかもしれませんね。
三内丸山遺跡の例のロングハウスの正体は不明で諸説ありますが、私は集団生活の場だと考えています。でも、こちらの場合は石器工房と評価されています。単純にロングハウスだから用途はこうだ、というような単純な評価はできないでしょう。一ノ坂遺跡の場合は、長さはあっても幅が狭いところが特徴で、それが用途と関連するかもしれません。
前期初頭ですからだいぶ温暖化が進んでいる時期ですが、その時期、少しの間かなり気温が下がった時期があったので、それと関係する遺跡かどうかが気になります。
* * *
さて、時刻はもうお昼です。今日のランチは、「道の駅 米沢」に行きましょう。
着到してみるとめちゃ混みでした。
まあでも仕方がない。3連休の初日ですし、お出かけする人が多いのでしょう。
注文して40分近く待ってようやく、「米沢辛味噌ラーメン」が出現しました。
良かった美味い!
味噌ラーメンに合う中太の縮れ麺。濃厚なスープがよく絡みます。
私は行列に並ぶことを嫌悪する短気人間ですが、美味しものが食べられるのであれば待てます。不満を言わず、ひたすら我慢する高い精神力を持っているのです。
結果的には予定よりも5分くらいのロスで済んだので良かった。