普通が却って普通じゃない縄文世界
2023年9月21日号
土偶というと、とても人間とは思えない顔をしていたり、仮面をかぶっている風だったりするが、北秋田市の白坂遺跡から出土したこの土偶の顔は普通だ。
普通過ぎて、却って呪力が高いのではないかと無駄な想像を巡らせてしまう。
白坂遺跡は、かの有名な「笑う岩偶」が出土した遺跡だが、「笑う岩偶」は晩期の所産で、こちらは後期。
伊勢堂岱遺跡に隣接している伊勢堂岱縄文館の土偶の展示はバラエティに富んでいて面白いのだが、それらの中でもこの遺物は異彩を放っている。
中嶋館長曰く、この土偶は女性に人気があるということだが、通常、土偶は女性を表現しているので、この子はボーイッシュな女の子といったところだろうか。
縄文人としては極めて異例な作風なので、きっと特別な意味が込められた土偶であろう。
もしかしたら、従来の土偶とは一線を画す新たな旋風を巻き起こそうとしたのかもしれない。
なお、顔のみの展示で、身体表現は不明だ。
こんな普通の顔をしていて身体は他の土偶のように奇天烈だったらどうしよう。
※本記事で紹介した遺物が現時点で展示されているとは限りませんので、その点はご了承ください。