九州歴史資料館
来月(2023年11月)、和泉と紀伊の現地講座をやりますが、和歌山市の大谷古墳からは非常にレアな馬冑(ばちゅう)が出土しています。馬冑というのは、その名の通り馬が被る冑(かぶと)です。
少し前に、その馬冑が九州歴史資料館で展示されるということを上述の現地講座に参加する予定のお客様から聴いていたのですが、すっかり忘れていて、今回の参加者から事前に九州歴史資料館に行きたいとのリクエストをもらったときは、あそこは古墳よりも大宰府関連の展示がメインだから行くのをやめようと思いました。
ところが、ふと馬冑のことを思い出したので、公式サイトを見てみたところ、「船原古墳とかがやく馬具の精華」という特別展が開催され、そこに馬冑の写真が載っていました。
でもこれは大谷古墳のじゃないなと思ってページ内を見たところ、それは船原古墳出土の馬冑でした。ただし、よく読むと、大谷古墳と埼玉古墳群の将軍山古墳の馬冑も展示されるとのことです。つまり、現在国内で3つしか見つかっていない馬冑が全て一気に見られるという凄い企画だったのです。
九州歴史資料館さん、それをもっとアピールしてください!
非常にもったいないですよ!
というわけで来ました。
立派な建物です。
何はともあれ、特別展から見ましょう。
なんと写真撮影もOK。
素晴らしい展示ですが、全部紹介すると大変ですし、さすがに写真撮影OKと言われてもちょっと気が引けるので、馬冑と蛇行状鉄器を紹介しましょう。
まずは、本特別展の主役である船原古墳出土の馬冑です。
解説は現地のキャプションを読んでいただくのが一番安全かと思います。
「実用性と美しさを兼ね備えたデザイン」というのは、なかなかよい評価だと思いますが、日本では実用品として使ったかどうかは分かりません。
ここでいう実用品というのは戦場で使うものと考えますが、こういう鉄の冑を装着しようとしたら、馬は嫌がるでしょう。
その辺はもしかしたら調教師の腕の見せどころなのかもしれませんが、もし、大人しく装着できたとしたら、儀式のときなどは相当目立ったでしょうね。
おそらく、近隣の豪族たちも見てビックリしたと思いますし、嫉妬されたかもしれません。
しかし、出土数から考えても、ヤマトから下賜されるかなりレアな品物と判断でき、もらった人は普段は部屋に飾っておいて、亡くなったときに副葬されたのかなと思います。
その辺、詳しい方がいらっしゃったらご教示ください。
つづいて、埼玉古墳群の将軍山古墳から出土した馬冑です。
個人的にはこれはお馴染み。
普段は、埼玉古墳群にある埼玉県立さきたま史跡の博物館に展示してありますが、ちょうどいま、同博物館は来年(2024年)3月末まで長期の休館中です。
そして、これとセットで展示されているのが、蛇行状鉄器です。
これもいつもは、さきたま史跡の博物館にあります。
これが何なのかは、ここに記されている通りです。
実際の使用方法のイメージは、将軍山古墳展示館にある「将軍様」の模型で分かります。
あれ、すいません、角度が良くなかった。
「将軍様」の後ろに旗が見えますが、旗を装着する器具ですね。
同様のものでもっと凄いのは、福岡県福津市の手光古墳群南支群第2号墳から見つかっており、それも展示されています。
これは普段は、福岡県福津市のカメリアステージの資料館に展示してあります。
余談ですが、同資料館は図書館と併設されていて床面積は少ないですが、とても良い遺物がたくさん展示してあるので、宗像方面の遺跡めぐりの際にはぜひ行ってみてください。
そして最後は、大谷古墳出土の馬冑です。
こちらは、主体部から出土した他の遺物と共に一括して国の重要文化財に指定されています。
ヨーロッパでは重騎兵といって、自分も馬も完全武装した兵士がいました。
それが集団で槍衾を形成して突撃したようですが、自分自身もあまりにも重装備過ぎて、落馬してしまったら歩くのも大変だったらしいですね。
日本にはそういう文化はありませんでした。
ちなみに大谷古墳は、墳丘長67mの前方後円墳です。
11月の泉州・紀州の現地講座で行きますよ。
なお、九州歴史資料館には旧石器も展示してあります。
九州歴史資料館は改めて来てみたらなかなか面白い施設だと思ったのですが、如何せん今日は時間がありません。
特別展以外の見学時間がほとんど確保できずに申し訳ないですが、次の場所へ向かいます。
※「船原古墳とかがやく馬具の精華」は2023年12月3日までの開催です。
仙道古墳