2021年12月に沖縄の遺跡めぐりをしてから洞窟遺跡への興味が湧いてきて、以降、列島各地に赴いたときは、なるべく洞窟遺跡を見るようにしています。
2024年4月に開催した出雲の現地講座の後編では、2か所の洞窟遺跡を訪れており、初日に訪れたのが猪目洞窟遺物包含層です。
島根半島北岸に位置し、韓竈神社の参拝を終えて、日本海側の県道23号線を西へ向けて走っていると遺跡が現れました。
車から降りて確認すると、まずはその穴の大きさに圧倒されました。そして、岩が綺麗。
本遺跡は国史跡になっており、説明板も設置してあります。
それでは、さっそく洞窟に入ってみましょう。
洞窟の幅は30mで、奥行きも30mあります。洞窟内には神様が祀られ、船着場の資材置き場にもなっています。
洞窟ってワクワクしますよね。
現在でも快適に棲めそうです。
島根半島北岸は、縄文時代の遺跡が極めて少ないのですが、ここでは縄文中期の土器が見つかっており大変貴重な遺跡であることが分かります。ただし、主たる遺跡としては、弥生時代から古墳時代後期までの生活痕と埋葬の形跡です。
人骨が13体以上見つかり、ゴホウラ製貝輪を装着した弥生人骨も見つかっています。
つづいて橋の上に行って、もう少し観察してみましょう。
この通り、資材を一緒に写すとちょっと残念なのですが、遺跡であると同時に生活の場でもありますから仕方がありませんね。
いや、本当に鑑賞に耐え得る岩です。
緑色凝灰岩(グリーンタフ)という火山噴出物によって生成された岩です。
猪目洞窟は、日本海側に北に開いた猪目湾という小さな湾の西岸にあります。道路から対岸の東側を見ると面白い形の岩が見えます。
出雲市のHPによると、この岩がイノシシの顔に見えて窪みが目に見えることから猪目という地名が付いたそうです。
猪目洞窟はこんな風光明媚な美しい場所にありますが、実はこの場所には怖い言い伝えがあるのです。
『出雲国風土記』「五 出雲郡」によると、黄泉の坂・黄泉の穴についての記述があります。出雲郡内の北の海の浜には脳の磯と呼ばれる磯があり、その西側に岩窟があってその奥には人が入れない穴があり、夢でこの岩窟の辺りに行くと必ず死ぬとあるのですが、その比定地が猪目洞窟なのです。
今回参加された皆様、その後、夢で猪目洞窟に行っていませんか?
でも考えてみれば、単に「必ず死ぬ」とあるだけで、「すぐに死ぬ」とは言っていませんね。
管見に触れる範囲では死なない人はいませんので、上の説話は100%間違っていませんが、文意からすると「すぐに死ぬ」と言わんとしているのだと思います。
今晩あたり見るかも。