諸磯式土器/縄文時代前期【ひたすら土器写真】

最終更新日:2024年9月24日

※写真はすべて稲用が撮影しました
※写真はなるべく文様がよく見えるように明るめに補正していますので、実物とは色味が違うことがあります
※展示ケースの反射で余計なものが写り込んでいるものがあります
※今一ピンが甘いものがあります
※撮影禁止のものは写していないつもりですが、万が一掲載不可のものがあったらお知らせください
※型式を始めとして説明文におかしな点がありましたらご教示ください
※紹介した遺物が現在その施設で展示されているとも限らないのでご注意ください
※各写真はクリックで拡大します

 

 

 諸磯式土器の標式遺跡は、神奈川県三浦市の諸磯貝塚(遺跡)です。

 

 ちなみに諸磯貝塚の現地は、ただこの石碑が建つのみで、石碑の裏に簡単な説明があるだけです。正面から写真を撮ろうとすると電柱に阻まれ、そしてこうやってWeb上に掲載するときはどうしても「はまゆう たんぽぽ」の宣伝も兼ねてしまう構図になります。

 さて、諸磯式土器は前期後半の西関東と中部地方で栄えた土器文化で、中期のバブリーな土器の前段階のまだ地味な印象のものが多いですが、洗練された美しさが光る土器もあります。

 諸磯式土器では、前期前半の花積下層式や関山式、それに黒浜式で盛行した羽状縄文とは別れを告げ、竹のようなものを半裁した施文具によって、平行沈線や爪形文によって施文します。非常に細かく施文しているものもあり思わず見惚れてしまう土器もあります。

 諸磯式は、a、b、cと分けられさらにそれを細分化する考えもあり、存続期間も長いためか、関東地方各地の博物館などでよく見かける型式です。ただし、ほとんどの箇所の展示では、「諸磯式」とは表記してあっても、それ以上の細かい型式までは書いておらず、もしそれが書いてあったらその施設の学芸員はかなりマニアックです。

 諸磯式では初めて深鉢以外の器が作られ始め、浅鉢が登場しました。博物館などの展示でも、諸磯式の浅鉢は良く見ます。なお、諸磯式土器文化圏では、まだ前期ということもありますが、それほど土偶を造っていません。

 

諸磯a式

キャプション情報
タイトル:浅鉢形土器(諸磯式土器)
出土地:東京都北区七社神社前遺跡
土器型式:諸磯式

北区飛鳥山博物館
2023年1月25日撮影

筆者所感
このような文様は、入組木の葉文(いりくみこのはもん)と呼ばれるもので、諸磯a式土器に特有な文様。

篠竹のような植物を縦に半分に切って、その先端で二重線を引きつつ押し付けるようにして爪形の文様を描いている。

土壙墓に副葬品として添えられていたもので、壁際に割られた状態で置かれていたが、副葬品の浅鉢の場合は、ほぼパーツが揃っていることが特徴できれいに接合できる。

 

 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
入組木の葉文が施文されているので諸磯a式土器だろう。

 

 

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器 浅鉢
出土地:八王子市TN No.420遺跡
土器型式:諸磯式

東京都埋蔵文化財センター
2022年5月14日撮影

筆者所感
良く見ると、入組木の葉文が見えるので、諸磯a式土器であろう。


 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
写真の角度が悪く出土した土器片があまり写っていない。

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯a式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

キャプション情報
タイトル:浅鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯a式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯a式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器 深鉢
出土地:千葉県柏市原遺跡
土器型式:記載なし

柏市郷土資料展示室
2024年2月15日撮影

筆者所感
上の雪ヶ谷貝塚出土土器とそっくり

  

 

諸磯b式

キャプション情報
タイトル:縄文土器 深鉢
出土地:多摩市TN No.753遺跡
土器型式:諸磯式

東京都埋蔵文化財センター
2022年5月14日撮影

筆者所感
沈線は2本で一組の意図が見られ、それで弧や直線を描いている。諸磯b式であろう。

 

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器 深鉢
出土地:八王子市TN No.205遺跡
土器型式:諸磯式

東京都埋蔵文化財センター
2022年5月14日撮影

筆者所感
ついにこんな斬新な口縁デザインの土器が誕生した。文様は、諸磯b式で良く見られる物。

 

 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
諸磯b式であろう。

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県北杜市寺所遺跡
土器型式:諸磯b式

北杜市考古資料館
2022年7月30日撮影


 

 

キャプション情報
タイトル:浅鉢形土器(諸磯式土器)
出土地:東京都北区七社神社前遺跡
土器型式:諸磯式

北区飛鳥山博物館
2023年1月25日撮影

筆者所感
二重線を引くときに断面を押し付けておらず、紋様の内側には縄文が施されている。

こちらも前出の東京都北区七社神社前遺跡出土の諸磯a式土器と同様、土壙墓に副葬品として添えられていたもの。

 

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県笛吹市釈迦堂遺跡
土器型式:諸磯式

釈迦堂遺跡博物館
2024年8月21日撮影

筆者所感
多重渦巻文が見られるのは諸磯b式の中段階。

 

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢
出土地:群馬県安中市中野谷松原遺跡
土器型式:記載なし

群馬県立歴史博物館
2022年5月21日撮影

筆者所感
諸磯b式であろう。



 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
まるでパン生地のようで美味しそう。諸磯b式であろう。

 

 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
諸磯b式であろう。

 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
横方向とX字の沈線は、諸磯b式土器であろう。
花びら状になった口縁部の突起は8つ。

 

口縁部が分かる写真はこれしかなかった

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯b式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯b式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

キャプション情報
タイトル:浅鉢形土器
出土地:東京都大田区雪ヶ谷貝塚
土器型式:諸磯b式

大田区立郷土博物館
2024年4月10日撮影

  

 

諸磯c式

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県北杜市甲ッ原遺跡
土器型式:諸磯c式

北杜市考古資料館
2022年7月30日撮影


 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県笛吹市花鳥山遺跡
土器型式:記載なし

山梨県立考古博物館
2022年9月29日撮影


 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県北杜市天神遺跡
土器型式:記載なし

山梨県立考古博物館
2022年5月15日撮影

筆者所感
この土器も素晴らしいがどうやっても上手に写真が撮れない。


 

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県都留市馬々舟遺跡
土器型式:諸磯c式

ミュージアム都留
2024年8月29日撮影


 

 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢
出土地:群馬県昭和村糸井宮前遺跡
土器型式:記載なし

群馬県立歴史博物館
2022年5月21日撮影

筆者所感
諸磯c式。現代人の目からは海を想像させられる貝殻状突起が付いているが、実際に海をイメージして考えたデザインであれば凄い才能だと思う。なお、前期海進の頃は、群馬県の南東域にまで海が広がっていたが、そこから結構離れた昭和村の遺跡から見つかっているところが面白い。海岸沿いの村からお嫁さんが来たのだろうか。

 

 

諸磯式期の面白遺物

 諸磯式期には非常に面白い遺物が出土しています。「デスマスク」のようだと言う人もいる千葉県成田市の南羽鳥中岫第1遺跡E地点で出土した人頭形土製品(国指定重要文化財)です。

千葉県成田市・南羽鳥中岫第1遺跡E地点出土の人頭形土製品(「発掘された日本列島2014」にて撮影)

 

 拠点集落であった同遺跡の土壙墓から見つかったもので、副葬品と考えられますが、こういったものは他に例がありません。実物は文化庁が秘蔵していてどこにも展示されておらず、成田市の下総歴史民俗資料館と佐倉市の印旛郡市文化財センターでレプリカの展示が見られます。

 なお、土壙墓とはその名の通り、土を掘って作った穴の墓ですが、前期になると確実に土壙墓が作られ始めます。早期には、貝塚で捨てられたように見つかる人骨がありますが、今の私たちが想像するような死者を埋葬して墓らしい墓を作るという行為がポピュラーになるのは前期です。

 ちなみに、考古学者によっては、墓穴のことを「土壙」と記し、何だか分からない穴を「土坑」と記して分ける人もいますが、両方とも「どこう」と発音するため、墓の場合はきちんと「墓」までつけて「土壙墓(どこうぼ)」と言ったほうがよいのではないかと思います。

 

細分化保留

キャプション情報
タイトル:縄文土器 浅鉢
出土地:八王子市TN No.174遺跡
土器型式:諸磯式

東京都埋蔵文化財センター
2022年5月14日撮影


 

 

キャプション情報
タイトル:
出土地:長野県茅野市下ノ原遺跡
土器型式:記載なし

尖石縄文考古館
2024年8月20日撮影

筆者所感
茅野市役所前のオブジェの元になった土器。というか、これはそもそも諸磯式土器かどうか分からないのでご存じの方がいたら教えてください。

 

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器 深鉢
出土地:稲城市TN No.480遺跡
土器型式:諸磯式

東京都埋蔵文化財センター
2022年5月14日撮影

筆者所感
沈線を斜めに引くこの文様は東関東の浮島Ⅲ式に似たのがある

 

 

キャプション情報
個別キャプションなし
出土地:長野県原村阿久遺跡
土器型式:未記載

原村八ヶ岳美術館
2024年8月20日撮影

筆者所感
60年代の鉄道車両を思い出す近未来的なデザイン。

 

 

参考資料

・『縄文土器の研究 普及版』 小林達雄/著

 

 

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