阿玉台式土器/縄文時代中期【ひたすら土器写真】

最終更新日:2024年12月27日

※写真はすべて稲用が撮影しました
※写真はなるべく文様が見えるように明るめに補正していますので、実物とは色味が違うことがあります
※展示ケースの反射で余計なものが写り込んでいるものがあります
※今一ピンが甘いものがあります
※撮影禁止のものは写していないつもりですが、万が一掲載不可のものがあったらお知らせください
※型式を始めとして説明文におかしな点がありましたらご教示ください
※紹介した遺物が現在その施設で展示されているとも限らないのでご注意ください
※各写真はクリックで拡大します

 

 

 阿玉台式土器の標式遺跡は、千葉県香取市の国史跡・阿玉台貝塚です。発音に関しては、なぜか考古学会では伝統的に「おたまだい」と呼んでいたのですが、最近では普通に「あたまだい」と呼ぶことが多いように思います。

 中期初めの関東地方は、五領ヶ台式土器文化圏としてまとまっていましたが、少しして東西に分裂してしまいました。西側がかの有名な勝坂式土器文化圏で、東側がこの阿玉台式土器文化圏です。あの強烈な見た目の勝坂式を向こうに回して勢力を維持したのが東関東の雄・阿玉台式土器なのです。

 私は阿玉台式土器のことを「縄文時代の古河公方」と呼びたい。

 ただし、少し古い資料ですが、『縄文土器大観』によると、その分布域は福島県・新潟県・長野県、そして伊豆にまで及んでいます。むしろ、勝坂式の方が分布域が狭く、イメージ的には、勝坂式土器を使う人たちはあまり広がらずに自分たちの世界(おどろおどろしいまでの列島最強の芸術的な世界)を構築し、阿玉台式土器を使う人たちは積極的に遠くに赴いて人びとと交わったように見えてきます(この2つの文化は500年くらい共存していました)。

 阿玉台式土器は、Ⅰa、Ⅰb、Ⅰb、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳの5つに細分化するか、あるいは、Ⅰbをさらに古相と新相に分けて6つに細分化して考えることが多いです。

 文様帯は、口縁部、頸部、胴部の3つに分けることができ、型式細分化の目安は、口縁部文様帯の隆帯によって区画された内側の線をどう表現しているかで、Ⅰ式は角押文(押引文)を一本引き、Ⅱ式は角押文を二本引き、Ⅲ式は幅広爪形文、Ⅳ式は沈線文です。

Ⅰ式(角押文1列)
Ⅱ式(角押文2列)
Ⅱ式(角押文2列)

 

 なお、Ⅲ式の古いものまでは、原則として地文に縄文を施さず、Ⅳ式になるとほとんどの土器の地文に縄文が施されています。同時期の勝坂式土器もあまり縄文を好みませんので、一時期の関東地方の人びとのあいだでは縄文離れが進んだようです。

 胴部の表面がうねっているように見えるものがありますが、輪積痕を完全に消さずにその風合いを生かしています。また、胴部には紐が垂れ下がったような懸垂文が多く見られます。

 同時期の勝坂式土器の影響を受けて、似たデザインの物もあります。外見上の大きな特徴としては、扇状把手というダイナミックな把手が付くものが見られることですが、当初段階では扇状把手は付かず、勝坂式土器の影響で付けるようになったと考えられています。

 また、金雲母を多量に含んだ混和剤を好んだため、キラキラ光っているものが多いのも特徴です。写真だとあまり伝わりませんが、実物を見てみると分かりますよ。私は勝坂文化圏で発掘の仕事をした時、阿玉台式土器の破片が出てきたことがありましたが、ビッカビカで一目で阿玉台と分かりました。

 阿玉台式土器文化圏ではほとんど土偶を造っていないため、まず見かけることは無いと思います。 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:千葉県船橋市高根木戸遺跡
土器型式:阿玉台Ⅰ式

飛ノ台史跡公園博物館
2024年11月24日撮影

 

キャプション情報
タイトル:関東地方の土器の特徴を示す土器
出土地:未記載(茅野市内)
土器型式:未記載

尖石縄文考古館
2022年4月10日撮影


 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器<阿玉台式土器>
出土地:神奈川県横須賀市黒岩岬遺跡
土器型式:阿玉台式

横須賀市自然・人文博物館
2024年9月8日撮影

筆者所感
最初にパッと見たときは勝坂式だと思った。


 

 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:千葉県船橋市上ホシ遺跡
土器型式:阿玉台式

飛ノ台史跡公園博物館
2024年11月24日撮影

 

キャプション情報
タイトル:深鉢
出土地:千葉市若葉区根崎遺跡
土器型式:阿玉台式

千葉市埋蔵文化財調査センター
2024年7月11日撮影


 

キャプション情報
タイトル:深鉢形土器
出土地:山梨県笛吹市釈迦堂遺跡
土器型式:阿玉台式

釈迦堂遺跡博物館
2022年9月29日撮影

 

キャプション情報
タイトル:深鉢[阿玉台式土器]
出土地:群馬県渋川市三原田諏訪上遺跡
土器型式:阿玉台式

渋川市赤城歴史資料館
2022年6月12日撮影

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器(深鉢)
出土地:茨城県水戸市圷遺跡
土器型式:阿玉台式

水戸市埋蔵文化財センター
2022年4月6日撮影


 

キャプション情報
タイトル:阿玉台Ⅱ式土器
出土地:茨城県石岡市
土器型式:阿玉台Ⅱ式

國學院大學博物館
2024年12月1日撮影

 

キャプション情報
タイトル:阿玉台Ⅱ式土器(縄文時代中期)
出土地:千葉県成田市久井崎Ⅱ遺跡
土器型式:阿玉台Ⅱ式

下総歴史民俗資料館
2024年6月12日撮影


 

キャプション情報
タイトル:深鉢[阿玉台式土器]
出土地:群馬県渋川市三原田諏訪上遺跡
土器型式:阿玉台式
備考欄:口縁部が特有の扇状把手によって飾られる

渋川市赤城歴史資料館
2022年6月12日撮影

 

キャプション情報
タイトル:房谷戸遺跡出土の縄文土器
出土地:群馬県渋川市房谷戸遺跡
土器型式:記載なし

群馬県埋蔵文化財調査事業団 発掘情報館
2024年1月29日撮影

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器(深鉢)
出土地:茨城県つくば市下広岡遺跡
土器型式:記載なし

つくば市桜歴史民俗資料館
2023年10月28日撮影


 

キャプション情報
タイトル:関東地方の土器の特徴を示す土器
出土地:未記載(茅野市内)
土器型式:未記載

尖石縄文考古館
2022年4月10日撮影

筆者所感
キャプションには土器型式は書いていないが、阿玉台式土器の扇状把手と似たものが付いている。


 

キャプション情報
タイトル:阿玉台式土器
出土地:東京都杉並区下高井戸塚山遺跡
土器型式:阿玉台式

杉並区立郷土博物館
2023年10月5日撮影

 

キャプション情報
タイトル:根郷貝塚出土土器
出土地:千葉県鎌ケ谷市根郷貝塚
土器型式:阿玉台式

鎌ケ谷市郷土資料館
2024年11月24日撮影

 

キャプション情報
タイトル:阿玉台Ⅳ式土器
出土地:不詳
土器型式:阿玉台Ⅳ式

國學院大學博物館
2024年12月1日撮影

 

キャプション情報
撮影失敗で不詳

江戸東京たてもの園
2022年5月14日撮影



 

 

キャプション情報
タイトル:縄文土器(深鉢)
出土地:茨城県水戸市小仲根遺跡
土器型式:阿玉台式

水戸市埋蔵文化財センター
2022年4月6日撮影


 

キャプション情報
タイトル:阿玉台式土器
出土地:茨城県石岡市東大橋原遺跡
土器型式:阿玉台式

石岡市ふるさと歴史館
2022年1月23日撮影


 

キャプション情報
タイトル:縄文土器 深鉢
出土地:千葉県柏市追花遺跡
土器型式:未記載

柏市郷土資料展示室
2024年2月15日撮影

※阿玉台式じゃないかも。分かる方はご教示ください。


 

キャプション情報
タイトル:浅鉢
出土地:千葉市若葉区根崎遺跡
土器型式:阿玉台式

千葉市埋蔵文化財調査センター
2024年7月11日撮影

 

 

キャプション情報
タイトル:浅鉢[阿玉台式土器]
出土地:群馬県渋川市三原田諏訪上遺跡
土器型式:阿玉台式

渋川市赤城歴史資料館
2022年6月12日撮影

 

キャプション情報
タイトル:阿玉台式土器
出土地:茨城県美浦村陸平A貝塚
土器型式:阿玉台式

美浦村文化財センター
2023年10月28日撮影

 

 

参考資料

・『縄文土器大観 中期Ⅰ』 小林達雄/編 小川忠博/写真 1989年
・『縄文土器の研究 普及版』 小林達雄/著 2002年
・『縄文土器ガイドブック』 井口直司/著 2012年
・『縄文土器展 デコボコかざりのはじまり』 長野県立歴史館/編 2014年
・『らくがく縄文館 展示解説図録』 千葉県教育振興財団/編 2021年 

 

 

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